わいせつ物頒布等罪

わいせつ物頒布等罪の法定刑は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料です(刑法第175条)。

なお、情状により、懲役及び罰金を併科する場合があります。

 

わいせつ物頒布等事件の解説

1 わいせつ物頒布等罪とは

わいせつ物頒布等罪は、わいせつな文書等を頒布し、又は公然と陳列した場合に成立します。

また、有償で頒布する目的で、わいせつな文書等を所持した場合にも成立します。

 

2 「わいせつな文書」等について

「わいせつ」とは、性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいうとされています。

「わいせつ」という概念は本罪以外の犯罪においても出てくる言葉ですが、犯罪の種類によってわいせつの概念も多少異なる場合があり、その認定に争いが生じることが多くあります。

特に本罪における「わいせつ」の概念は、芸術性等の観点から、その判断が難しいといえます。

文書のわいせつ性の判断につき、判例は、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、その描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現されたし相当とその描写叙述との関連性、文書の更生や展開、更には芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から当該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味に訴えるものと認められるか否かなどの諸点を検討する必要があるとしています(最判昭55・11・28)。

 

3 禁止される行為について

⑴ 「頒布」について
物の「頒布」とは、不特定又は多数の人に対して交付・譲渡することをいいます。
有償である必要はありません。

⑵ 「公然と陳列」について
「公然と陳列」したといえるためには、不特定又は多数の人がその内容を認識できる状態に置くことをいう。
例えば、サーバーコンピュータにHPを解説し、わいせつな画像データを蔵置して、不特定多数の者が容易にみられる状態を作出することは、陳列にあたるとされています。

⑶ 「有償で頒布する目的」での「所持」について
「有償で頒布する目的」とは、有償でわいせつ物等を頒布する目的をいいますので、販売目的のみならず、レンタル目的である場合にも「有償で頒布する目的」があるといえます。

 

4 わいせつ物頒布等事件等の流れ(平成26年度検察統計年報参照)

刑事事件として処理されたわいせつ物頒布等事件等(わいせつ物頒布等事件のほか、公然わいせつ事件を含みます。)のうち、被疑者が逮捕されたケースは約39%と高くありません。

また、逮捕された場合の勾留率は80%と高いものの、勾留延長される場合は約57%に止まります。

そして、わいせつ物頒布等事件等として処理されたケースの起訴率は67.5%とされています。

 

わいせつ物頒布等事件の対応

1 無罪を主張する場合

身に覚えがないにも関わらず、わいせつ物頒布等の容疑を掛けられてしまった場合には、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対してその旨主張することで、不起訴又は無罪を獲得する余地があります。

身に覚えのないわいせつ物頒布等の容疑をかけられた場合には、アリバイや真犯人の存在を示す証拠を提出することで、わいせつ物頒布等罪を立証する十分な証拠がないことなどを主張していきます。

もっとも、アリバイの主張・証明にはポイントがあるところ、効果的な主張・証明を行っていくことは、一般の方には困難と思われます。

この点、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、わいせつ物頒布等事件など刑罰(刑事責任)が問題になる刑事事件・少年事件を取り扱っており、わいせつ物頒布等事件の刑事弁護実績が豊富な弁護士が多数在籍しておりますので、適切なアドバイスをすることにより、不起訴・無罪を獲得するためのサポートをさせていただきます。

 

2 罪を認める場合

⑴ 謝罪、示談
わいせつ物頒布等罪は、特定の被害者を観念できないものの、被写体とされた者が実質的な被害者と観念できる場合があります。

そこで、かかる場合には、被害者感情が重要視される昨今、実質的な被害者の方と示談することは、重要な弁護活動です。

警察に被害届が提出される前であれば、被害届の提出を阻止し、警察の介入を阻止して事件化を防ぐことができます。

警察に被害届が提出されてしまった後であっても、わいせつ物頒布等事件においては、示談をすることによって、不起訴を獲得する可能性を高めることができます。

わいせつ物頒布等事件では、被害弁償や示談の有無及び被害者の処罰感情が被疑者の処分に大きく影響することになるので、弁護士を介して迅速で納得のいく示談をすることが重要です。

また、示談をすることで被疑者が釈放される可能性もありますので、示談によって被疑者の早期の学校復帰・社会復帰を目指すことができます

 

⑵ カウンセリング等を受ける
わいせつ物頒布等事件の加害者のなかには、その背景に自己の性的衝動に対するコントロールに関し、何らかの問題を抱えている場合が多く、そのような場合には、専門家による治療が必要となります。

カウンセリングを受けたり、クリニックに通うことによって、問題を根本から改善する必要があります。

 

⑶ しょく罪寄付
わいせつ物頒布等により、不当な利益を得ていた場合には、そのような利益を贖罪寄付により吐き出すことで、行為者の反省を示すことができます。

 

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