性犯罪の裁判での被害者配慮

1 被害者特定事項の秘匿

性犯罪・わいせつ事件などの被害者にとっては、裁判手続の中で被害者の氏名や住所などが公開され、被害者が特定されることで、社会的な悪影響や、精神的な苦痛を被るおそれが考えられます。

そこで、裁判所は、性犯罪・わいせつ事件などの被害者の氏名等(被害者特定事項)について、公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができます。

この決定がなされた場合には、起訴状の朗読などの訴訟手続は、被害者特定事項を明らかにしない方法で行われます。

その一例として、検察官は、証人尋問請求の際に、あらかじめ弁護人に対し、その氏名及び住所を知る機会を与えなければなりませんが、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者等の名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれ等があると認めるときには、被害者特定事項が、被告人の防御に関し必要がある場合を除き、被告人その他の者に知られないようにすることを、弁護人に対して求めることができます。

この秘匿決定の申出を、被害者の側から行うときは、被害者あるいは被害者より委託を受けた弁護士が、検察官に対して申し出る必要があります。

検察官がこの申出のあったことを裁判所に通知し、裁判所が秘匿決定の判断をします。

 

2 性犯罪・わいせつ事件裁判での被害者配慮

性犯罪・わいせつ事件の被害者が、裁判で証人として証言する際には、加害者と直接に顔を合わせることになったり、証言中に傍聴席の視線にさらされることになったりと、被害者の心の傷がさらに深まるおそれが考えられます。

そこで、裁判所は、性犯罪・わいせつ事件の被害者が圧迫を受け精神の平穏を害されることのないよう、付添人・遮へい・ビデオリンク方式のいずれかの措置をとることが認められています。

 

① 証人への付添い

「証人を尋問する場合において、証人の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、証人が著しく不安又は緊張を覚えるおそれがあると認めるとき」には、「その不安又は緊張を緩和するのに適当」と認める人を、証人に付き添わせることができます。

家族や心理カウンセラーが付添人になるのが、一般的です。

 

② 証人の遮へい

「証人を尋問する場合において、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、証人が被告人の面前(省略)において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める」ときには、「一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置」として、ついたて等を置くことができます。

また、「傍聴人とその証人との間で、相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置」として、ついたて等を置くことも認められています。

 

③ ビデオリンク方式

性犯罪・わいせつ事件など特定の犯罪の被害者等を証人として尋問する場合には、裁判が行われる法廷以外の場所に「その証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法」によって、テレビモニターとマイクを通じて、別室で証言をすることができます。

性犯罪・わいせつ事件の被害者からの依頼を受けた弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、その犯罪の裁判手続の中で、被害者の実名等が公開されることや、証人尋問で被害者と加害者が顔を合わせることによる精神的苦痛など、被害者がさらなる被害を受けることのないよう、裁判所に対するさまざまな働きかけや、刑事裁判の経験に基づくアドバイスをいたします。

 

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